公証役場とは、公証人が執務する事務所であり、全国に300箇所あります。名前に「役場」とある通り、とても公共的な存在なのですが、普段の生活ではなかなか足を踏み入れる機会は少ないかもしれませんね。
「公証人」も聞きなれない名前かもしれません。公証人は、法務大臣が任命した「実質的な公務員」で、裁判官、検察官、弁護士等の法律実務経験者が法務大臣の任命を受けて働いています。
依頼者の利益のために働く弁護士や司法書士等とは異なり、中立・公正な立場で、書類の作成や認証等を行う役所として、大都市の一角のテナントビルに入っていることが多いです。
公証役場って何ができるの?
公証役場で出来ることは主に3つあります。
- 公正証書の作成
- 確定日付の付与
- 認証
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
公正証書の作成
公正証書とは、私人からの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。
世の中の文書には「公文書」と呼ばれるものと「私文書」と呼ばれるものがあります。公文書は、公務員が作成した文書、私文書は、私人(公務員以外)が作成した文書です。
公文書には「形式的証明力」という強い力が与えられており、「この書類は公正で偽りのない文書です」という強い推定が働くことになります。私人が作った私文書を、公証人にお願いして公文書化したものが「公正証書」ですので、公正証書にも「形式的証明力」が働くことになります。要は、「証拠資料」として形式的には問題ないですよ、ということです。
内容の信憑性を問う「実質的証拠力」についても、裁判上の証言のように偽証罪の適用は無いものの、公証人に虚偽の公正証書を作成させれば「公正証書原本不実記載罪」で捕まるため、「逮捕のリスクを冒してまで、偽証しないよね」と、実務の世界では私文書に比べて相当高い信憑性が認められています。
遺言の公正証書とは?
遺言の方式にはいくつか種類がありますが、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のどちらかを作る方が大多数です。
自筆証書遺言を作るのにほとんどお金はかかりませんが、法律で決められた書き方を守っていないために無効となったり、遺言の内容が不利にはたらく相続人が隠匿したりと、何かと利便性・安全性に欠けるデメリットを持ち合わせています。
公正証書遺言は法律のプロである公証人がチェックした上で公証役場に保管されますので、自筆証書遺言のような心配がなく、相続をめぐる争いを未然に防ぐことができるメリットの大きい遺言方法なのです。
確定日付の付与
私文書に対し、「その日に文書が存在していた」ことを証明するものが、確定日付の付与です。公証人が、私署証書(私人の署名または記名押印のある文書)に確定日付印を押してくれます。700円 /件とリーズナブルに利用できます。
契約や覚書において、「いつ契約したのか」が大切になる場面は多く、第三者である公証人が確定日付を押すことにより、改ざん等による紛争を予防する効果が期待できます。
確定日付の付与は公正証書のように、文書のチェックをしてくれるわけではありません。法律的に問題があったとしてもただスタンプを押されるだけですので、公正証書の代わりにはならないことは認識しておきましょう。
認証
認証とは、「行為」や「文書」が正当な手続・方式に従っていることを公の機関が証明することをいいます。公証役場では、会社の設立などで必要な「定款認証」と、私署証書の認証があります。
公正証書遺言に行政書士は不要?
公正証書遺言を作りたいんですが、公証人に頼めば作ってくれるんですよね?
それでは、行政書士や司法書士のサポートを受けなくても、公正証書遺言を作ることはできそうですよね?
もちろん士業を使うことなく、公正証書を作ることは可能ですが、遺言の原案は、ご本人が考える必要があります。
遺言の原案作成を専門家に依頼するメリットは?
公正証書遺言は公証人と依頼者様ご本人で作ることができますが、遺言書の作成を公証人に丸投げすることはできず、あらかじめ遺言の原案を考えておかなければなりません。
行政書士等の専門家に依頼することの大きなメリットのひとつは、原案の作成をサポートしてもらえることです。「どのような遺言を残したいか」をお話しいただければ、それを法律的に問題ない形で文書にまとめるのが、行政書士や弁護士といった法律のプロなのです。
また、公正証書遺言を作るにあたっては、印鑑証明書、戸籍謄本、残高証明書など、多くの公的書類を公証役場に持参する必要があります。行政書士に依頼した場合、戸籍謄本や住民票といった書類の取得や、作成をお願いすることができ、公証役場との調整を委任することができます。
公正証書遺言を作るまでの多くのステップを行政書士に一任することでご自身の負担を大きく減らすことができるのです。
公正証書遺言はいくらかかる?
公正証書遺言を作成するためには、公証役場に支払う手数料がかかります。
公証役場に支払う手数料は以下のとおりです。(全体の財産が1億円以下のときは、下記の表で算出された手数料額に、11,000円が加算されます。これを「遺言加算」といいます)
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
また、行政書士、司法書士、弁護士等の専門家に依頼した場合には、報酬が別途発生します。専門家に支払う報酬額は、相続財産の金額にもよりますが、10万円~40万円程度であることが多いと思います。
各事務所によってバラバラですので、ひとつの目安としてください。