まさかの10%未満!多くの人が遺言を書いていない現実。

平成29年度の法務省の調査によると、55歳以上に対するアンケート調査(約7500名を対象)で、遺言を書いたことのある人の割合が10%に満たないことが分かっています。

平成 29 年度法務省調査 我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務報告書

75歳以上では約11%の方が遺言を残しているのに対し、55~59歳では4%に留まっています。「かなり少ないな」という印象を抱く数字ですね。実に90%近くの人が遺言を残していないのです。

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でも「遺言を残したい!」と思っている人は3割も

平成 29 年度法務省調査 我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務報告書

対して、遺言を残したいと考えている人は各人口の3割以上いることも、アンケート結果から分かっています。

遺言を書いておきたいけど、何を書いたらいいかわからない、いくらくらいかかるか不安、など、お悩みを抱えている方も少なくないようです。

遺言を残さないとどうなる?

「遺言を書く」という作業で見えてくるのは、今の自分にどのような財産があるのか、そして、誰が相続人になるのか、といった、「今のリアルな自分」の姿です。遺言を書く最大のメリットは、自分自身のことを、大切な人のために、正確に伝えられることなのかもしれません。

さて、そんな遺言ですが、実際はほとんどの方が書いていないのが実情です。遺言を残さないと、どのようなデメリットがあるのでしょうか?

相続人同士で争いが起きる可能性

配偶者やお子様のように、相続人が仲睦まじい間柄であったとしても、誰がどのように相続するかを当人同士で決めるのは大変なことです。あらかじめ、遺言で「誰に、どのように」分配するかを示しておくと、残されたご遺族にとっては大きな指針となるはずです。

法定相続人以外にも、財産を渡したければ、遺言。

とても親切にしてくれた近所の方に、感謝の気持ちを込めてお金を渡したい。

そう願っていたとしても、遺言がなければ財産を渡すことができません。逆に言えば、遺言を残しておくことで、ご家族でない相手にも、きちんと財産を残すことができるのです。

遺言を作るのは大変なの?

遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

自筆証書遺言は、お金がかからないので簡単に作れますが、誰かのチェックが入るわけではないので、蓋を開けてみたら「無効でした」の可能性も。秘密証書遺言は、証人の立会いで作る遺言で、内容は秘密にできるものの、自分自身で保管するため、第三者による改ざんの可能性もあり、あまりお勧めできません。

そこでおすすめなのが「公正証書遺言」です。

公正証書遺言は、公証役場にて作成する遺言形式です。公証人手数料がかかりますが、裁判所での検認が不要であり、原本は公証役場にて保管されるため、偽造・改ざんされる恐れがないため、最も安心・安全な遺言の方法と言えます。

作成には行政書士や司法書士等の専門家に依頼するのが一般的ですが、ご自身で進めることも可能です。

公正証書遺言のつくり方

STEP
遺言の原案を作成する

公正証書遺言に書くための内容を、まずはご自身で考えていきます。相続させる財産を洗い出す必要があります。

公証人に伝える内容になりますので、何の財産を、誰に残すのか、書き忘れがないように、内容を吟味する必要があります。

STEP
必要な書類やモノを準備する
STEP
STEP
  • 遺言者の実印
  • 実印が登録された印鑑証明書 (発行3ヶ月以内)
  • 戸籍謄本 (遺言者、相続人の続柄が分かるもの)
  • 住民票 (相続人以外の遺贈者がいる場合)

不動産や預貯金がある場合、登記簿謄本(登記事項証明書)や通帳のコピーが必要になります。

STEP
証人を2人、依頼する

公正証書遺言の作成には、2人以上の証人に立ち会っていただく必要があります。

ただし、お子様や配偶者など、ご親族が証人になれないので注意が必要です。

(証人及び立会人の欠格事由)

第974条

次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。

一 未成年者

二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

STEP
公証人と打ち合わせをする

最寄りの公証役場に連絡をして、面談予約をとりましょう。

日本公証人連合会のWEBサイトから、最寄りのところを探してみてください。

お打ち合わせの際に、遺言の原案と用意した書類を持参します。公証人と話し合いながら、法的に問題ないかチェックしながら遺言を作成していきます。

もし体調に問題がある場合は、病院や自宅まで公証人に出張してもらうことが可能ですが、基本的には公証役場にて打ち合わせを進めます。

STEP
公証役場にて遺言を作成する

公証人との打ち合わせで、遺言を作成する日を決めておき、その日に証人2名と一緒に公証役場に出向きます。

公証人が遺言を読み上げますので、証人と一緒に内容を確認。最後に署名捺印をして、完成です。

公証人手数料だけなら、5万円あれば作れることがほとんど。

公正証書遺言を作成する場合、公証人手数料が必ずかかります。

目的の価額手数料
200万円を超え500万円以下11000円
500万円を超え1000万円以下17000円
1000万円を超え3000万円以下23000円
3000万円を超え5000万円以下29000円
5000万円を超え1億円以下43000円
公証人手数料令第9条別表 より抜粋

ただし、公証人手数料は、そこまで費用はかかりません。

ご自身で、相続人となるべき人の確定、公正証書の原案作成、証人の手配、公証役場との打ち合わせ等をすべて行うのであれば、あとはプラス書類取得費用&交通費くらいで、公正証書遺言の作成まで行うことができるのです。

遺言の原案作成、証人手配、書類収集、公証役場との打ち合わせの代行費用は?

原案を作れって言われても、何から書いたらいいか不安だなぁ…
書類を集めるのも一苦労だ…

そんな時は、行政書士にご依頼されるのも選択肢のひとつです

多くの行政書士事務所では、公正証書遺言の原案作成、証人手配、打ち合わせ代行、相続人調査等を行っています。

「自分でやれるかも」と思っても、実際にやってみると結構大変です。そんなときは、書類作成のプロである行政書士にご相談ください。

ご相談をご希望の方は、当事務所に直接お問い合わせいただくか、最寄りの行政書士会にお問い合わせいただけますと幸いです。

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